手みやげについて。

 

 「手みやげ不要。楽しいみやげ話は、大歓迎」

 

学生時代の恩師宅の玄関

達筆な筆字の張り紙が、壁に貼ってあった。

 

「ひとりじゃ、食べきれないのよ。

どれでも好きなもの、持っていきなさいな」

 

そう言って、居間の収納を開けると

某有名店の箱菓子、お茶の包みなどが

包装紙もそのままに山積みされていた。

 

「目上の方に手みやげを持参するのは、常識」

 

 

恩師は80代、ひとり暮らし。

お客さんが大好きで、教え子たちが

菓子折りや手作りの惣菜、自家製の漬物を持って

先生宅をよく訪ねてくる。

 

だが実は「歳だから、もうね…」と

こっそり処分していた先生

 

「楽しいおみやげ話は、大歓迎」も、

 

「不幸話って、聞き飽きちゃうのよね」

 

そういう私も「先生、聞いてくださいよー」と

時々、人生指南を仰いでいた。

 

高価な和菓子を小脇に抱え

いそいそと先生宅へお邪魔していたのだが、

それが裏目にでていたとは!

 

ひざ下から崩れ落ちそうになった。

 

これからは…と肝に銘じ

両手に紙袋をぶらさげ、恩師宅を後にしたのだが、

つい先日、帰省した実家で

まったく同じセリフを父から聞く羽目になった。

 

「入院中だし、食事制限してるからって

いちおう伝えてあるんだけどね。気持ちは嬉しいんだけどね」と

 入院中の母への見舞いの品(箱菓子)が

積まれた仏壇の前で、父が紙袋を差し出した。

 

「好きなだけ、持っていきなさい」と。

  

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お題「捨てられないもの」